• Interview

2021.09.10 Fri

チャレンジャー紹介:株式会社Flint 飯野 航平さん

 

「今、ストレスなく生活できていますか?」そんな問いかけをされた時、あなたなら、どう回答するでしょうか。現代社会において、自身のこころの状態に気づかないまま無理をして、そして、気づいた頃には燃え尽きてしまっているという方は多くいます。そこで、アバターを使い自由にコミュニケーションが行える“VR空間”で、病院へ行かずに自宅から臨床心理士のカウンセリングを受けたり、同じ境遇の人へ相談できる環境の提供を目指しているのが株式会社Flintです。

 

今回は、同社の代表取締役である飯野氏に、事業化に至った経緯などをインタビューいたしました。(インタビュアー:山岡)

 

 

写真:飯野 航平

株式会社Flint 代表取締役

「4年後には起業する」と宣言した上で、新卒でGMOグループへ入社。営業に配属され優秀な成績を収めるも、仕事に関する悩みを発散する場がなく、自身がストレスを感じていると気づけなかった結果、一時、適応障害と診断されることに。当初は、精神科や心療内科を受診することに不安と恥ずかしさがあったが、一度受診すると「風邪をひいたので病院へ行く」と同じ感覚になっていったという。もし身近な家族や友人、多くの人々が同じように悩みを抱えた時に、そのような自身の体験をオープンにする事で状況が少しでも良くなれば、という想いで株式会社Flintを創業。

世にある既存のサービスを組み合わせて、プロトタイピングへ挑戦

 

山岡:

本日はよろしくお願いします!早速ですが、ビジネスアイデア拝見しました。VR空間を使ったメンタルケア、凄いですね。

 

飯野:

ありがとうございます!今は「Virbela(バーベラ)」という海外のサービスを使ってテストを行っています。バーベラが開発されたアメリカでは地理的に東西が広く、移動が大変・・・ということで、実はコロナ前から広く使われていたサービスなのですが、コロナ禍のご時世で、さらに利用が広がっていますね。Virbelaで知り合ったメキシコ在住のパートナー含む5名のメンバーと開発を進めているのですが、数百人の同時接続があっても音声の遅延もなく快適。臨場感のあるこの3D空間で、人々が心のケアを受けられるように、臨床心理士の方に相談できたり、同じような悩みを抱えている人と交流できる場を作っています。

 

山岡:

海外のツールだったんですね。しかもメキシコのパートナーと!

 

飯野:

国内サービスにも良いものはたくさんあるのですが、どうしても開発に莫大なコストがかかることがネックで。現状だと、使いやすさとしてはバーベラが一番良いと感じています。ただそれだけでなく、既存のツールをパズルのように組み合わせて「ここはSlack を使って、ここは◯◯を使って・・・」と試行錯誤をしています。その経験を社内のエンジニアともフィードバックしながら、自社コンテンツのUIをどうするかなど、検証を行っています。

 

山岡:

そういったフェーズなのですね。確かに、世に優れたサービスがすでにあるならば、それを活用するのが一番早いですよね。

 

飯野:

僕らは、コンテンツを作っていこうと思っているんです。例えばFacebookなど、世界中の大手企業がウェアラブル端末を開発してますが、そういったこともあり、僕たちはハード面をやらなくても良いかなと。むしろ、どんなハードでも対応し得るコンテンツを作っていこうと考えてます。

適応障害の診断を受けた自身の経験が、ビジネスアイデアへ

 

山岡:

ちなみに、なぜこのようなアイデアを思いついたのでしょうか?

 

飯野:

新卒でGMOへ、新卒採用チーム候補として入社しました。「まずは現場を知る」ということで、1年の期限付きで営業に配属されました。しかしながら、新規開拓チームは少なく、新規営業チームは自分たちだけでした。がむしゃらに働き、営業成績トップを収めたのですが、自分で上手に周りを頼ることができず、いよいよ精神的に処理が追いつかなくなり…まさか自分が、という驚きと生活の不安を抱えました。

 

当時は、精神科や心療内科を受診したことがなかったので、不安と同時に「恥ずかしさ」のようなものもあり。でも、実際に受診してみるとなんてことはなく、むしろその後は「風邪をひいたので病院に行く」くらいの感覚になれたんです。その時の経験が元となり、同じような悩みを抱えながらも解決の手段を探している方へ、気軽にストレスケアする機会が提供できたらな、と。

 

元々起業する予定で、 4年以内に起業するつもりだったので、それでも採用してくれた会社には、感謝しています。。

 

山岡:

なるほど、大変な経験だったかと思いますが、それが今の事業アイデアにつながっているのですね。ちなみに、今おいくつですか?

 

飯野:

今25歳で、今年の3月末に退職したところです。

 

山岡:

若いですね…!僕も30歳までに独立しようと志して、今こうやって起業してなんとかやってるのですが、今思うに、もっと早くてよかったなと。25歳で独立できるというのは、本当に羨ましいです。

 

飯野:

飛び込む前は結構ビビりませんでした?笑 でも、飛び込んでみると案外大丈夫だなと。

 

山岡:

わかります!ほんとに食っていけるのか、起業するまでずっと不安でしたね。いろんな経営者に話を聞くんですが、みんな「なんとかなるよ」と。笑 確かに、始めて見たらなんとかなる。でも、それは経験してみないとわからない感覚かもしれないですね。

「個人に委ねても解決しない」…toB領域への展開へ意欲

 

山岡:

今後の展望は、どう考えているのでしょうか?

 

飯野:

今は、ユーザーの意見に触れる機会をどんどん増やしています。どこにニーズがあって、その方々がどんな生活をしていて…という理解を増やしていきたい。ですが、今後はtoB向けに導入ができないかと思っていて。50名以上の従業員を抱える企業なら「ストレスチェック」が義務化されているんですが、僕も従業員だった時にチェックを受けた時、大きなストレスが溜まっていることは早々に分かっていました。でも、それで予防などの観点で精神科など診察を受けるかというと、行かない。構造的に個人での自己解決を期待することが難しいんですよね。ならば、トップダウン方式で行くべきだろうと思ってます。会社から「ワクチン打って」「健康診断受けて」と言われると、みんな受けますよね。人事制度の中に、メンタルケアを組み込めないかな…と。

 

山岡:

なるほど、産業医との面談時間を合わせたりするのも大変ですもんね。

 

飯野:

そうなんですよ、あと誰も「変な人」と思われたくないじゃないですか。産業医に相談してると、人事に相談したくない人もいる。そこを拾ってあげたいなと。アバター空間だと顔バレしないし、会社にもバレないし、でもしっかりメンタルケアできている、という環境をスタンダードにしていきたいですね。

 

実は、労働安全衛生法が2023年に見直されます。2018年に第13次労働災害防止計画(13次防)にてストレスチェックの義務化が決定されました。次回の2023年の第14次労働災害防止計画(14次防)では個人だけでなく、部署やチーム単位でストレスチェック集団分析が義務化されると言われています。その結果快適な職場環境作りを国として斡旋する取り組みが進んでいるのです。

 

企業は政府の指示に応じて柔軟に職場環境を変化させていく必要があります。ストレスチェック導入の際は1年間の猶予がありました。今後また新たな制度導入により、多くの企業が変化を必要とされると思います。弊社は多くの企業様のサポートを実施する企業としても機能していこうと考えています。

 

山岡:

例えば、相談しているときはアバターでOKだと思うんですが、もし本当に通院した方が良いようなケースを発見したら、どうするんですか?

 

飯野:

そういった場合は、提携しているクリニックなどに紹介する形を取ろうと思っています。ですが、そもそも「病院にいくまでの間」にいろんな不安を抱えている方が多いです。例えば、何を聞かれるんだろう?など…そういった不安をなくすことが大事で、「こういった場所に、こういった人がいて」と丁寧に説明することで、ハードルを下げてあげたいなと。

 

山岡:

なるほど、確かにそうですよね。そこが、このサービスの一番大きなポイントだなと思いました。

最後に、今回NOROSI Startup HUBで、飯野さんが神戸市や渋谷区と一緒に取り組みたいことなどありますか?

 

飯野:

それは、もちろん渋谷区と神戸市と一緒に連携して、こういった市民のメンタルケアの実証実験ができないかな?と思って期待しています。

悩みって年代ごとに変わっていくと思っていて、例えば20代だと結婚、30代だと育児…など。それぞれの悩みでカテゴライズして、同じような悩みを持った人と共有できたり、専門家と会話できたり、という場の提供が僕たちの活動ですが、この想いに共感できる仲間とも出逢いたいです。

 

山岡:

NOROSI Startup HUBで、そのような期待に応えられるような取り組みをしていきたいと思います!ありがとうございました!

 

飯野:

ありがとうございました!